森下昴は付き合って3年が経つ恋人・
美紀との結婚を間近に控えていたが、
ある日、彼女は交通事故で亡くなってしまう 。
言葉にならない苦悩と悲しみで
茫然自失の日々を過ごす中、
母・洋子に促され、
久々に故郷の岐阜へと帰省する。
洋子もまた、不慮の事故で夫を亡くし、
未だに心に傷を抱えていた。
悲しみは癒えないと思っていたが、
ある不思議な体験を通して、
昴は美紀の死と向き合っていくように――。
映画館でご覧になった方から、
お手紙を頂戴しましたので掲載させていただきます。
このタイトル自体に強く呼びかけられたような気がしてチケットの予約をしました。
何かの救いの手がかりを与えてくれるのではないかという期待と、
センチメンタルな若者の物語ではないかという懐疑、半々で劇場へ行きました。
けれども、冒頭からの感情を抑えた静謐としたシーンで、
すでに涙があふれてきました。
絶対的な不在の中に投げ込まれたとき、
人は絶望か希望のどちらかを選ばなくてもよい、
絶望を背負って希望することもできる。
その鍵は、忘却のしかたにある。
しかもそれは、誰にでも一律に当てはめられる回答ではなくて、
「君」(You)という、私にとっての唯一無二の存在に対する関わり方である。
ゆえに、その「しかた」を体得できるのは、「この私」しかいない。
私を救えるのは私しかいない。
けれども、その私は君に支えられている。
共にあることと絶対的な孤独、ひとりだけど共にある、
そうしたアンビバレントな人間存在のあり方をこの映画は伝えてくれます。
京都大学 大学院教授 斉藤 直子